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知らないと損する!住宅ローン減税〈1年目〉とふるさと納税の落とし穴 ― 確定申告で得する完全ガイド

マイホームを手に入れることは、人生の大きな節目です。そして、その喜びと同時にやってくるのが「住宅ローン減税」や「ふるさと納税」など、家計に直結する税制との付き合いです。特に住宅購入初年度は、確定申告や控除手続きが重なり、慣れない対応に戸惑う方が少なくありません。
「ローン控除で所得税がほぼゼロになったのに、ふるさと納税を前年と同じ感覚で申し込んでしまった」
「ワンストップ特例を使ったつもりが、確定申告で無効になっていた」
――こうした“初年度ならではの落とし穴”は、誰にでも起こりうるものです。
この記事では、住宅ローン減税によって変動するふるさと納税の控除上限の考え方や、ワンストップ特例が使えないケースの注意点など、住宅購入後すぐに知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。
「知らなかった」では済まされない制度の落とし穴を回避し、控除をしっかり活用して家計を守るために――。まずは全体像をつかんで、“初年度のトラブル”を“納得の成功体験”に変えていきましょう。
目次
住宅ローン減税とは?
住宅ローン減税の仕組み
まずは住宅ローン減税について確認していきましょう。
住宅ローン減税(正式名称:住宅借入金等特別控除)とは、年末時点の住宅ローン残高の0.7%を所得税から、最大13年間にわたり控除できる制度です。対象となる住宅には、床面積が50㎡以上(合計所得金額1,000万円以下の場合、2024年12月31日までに建築確認を受けた新築住宅は40㎡以上に緩和)、引き渡しまたは工事完了から6か月以内に自ら居住すること、といった要件があります。
また、長期優良やZEH水準など住宅の省エネ性能や、入居した年によって、借入限度額が決められている点も要チェックです。
新築住宅の場合
- 長期優良住宅・低炭素住宅
2024年入居 4,500万円 (子育て世帯等 5,000万円)
2025年入居 4,500万円 (子育て世帯等 5,000万円) - ZEH水準省エネ住宅
2024年入居 3,500万円 (子育て世帯等 4,500万円)
2025年入居 3,500万円 (子育て世帯等 4,500万円) - 省エネ基準適合住宅
2024年入居 3,000万円 (子育て世帯等 4,000万円)
2025年入居 3,000万円 (子育て世帯等 4,000万円) - その他の住宅
2024年入居・2025年入居 0円
(2023年までに新築の建築確認 : 2,000万円)
住宅ローン減税では、上記借入限度額から計算される最大控除額、または年末時点の住宅ローン残高の0.7%のうちいずれか低い金額が所得税や住民税から控除されます。
たとえば新築の長期優良住宅・低炭素住宅に2024年入居の場合、借入限度額が4,500万円なので、借入限度額4,500万円×控除率0.7%=31.5万円が最大控除額。年末時点の住宅ローン残高が3,400万円とすると、初年度の控除額は3,400万円×0.7%=23.8万円。
実際に控除を受けられるのは23.8万円までで、所得税から控除しきれない場合は翌年の住民税から控除されます。
なぜ“1年目”だけ確定申告が必須なのか
住宅ローン減税は原則として会社員であれば年末調整で自動適用されますが、初年度だけは確定申告が義務づけられています。
その理由は、税務署が融資残高や本人居住要件などを初めて確認するために、『住宅借入金等特別控除申告書』を提出させる必要があるからです。『登記事項証明書』『売買契約書』『長期優良住宅認定通知書』等、年末調整では勤務先が収集できない書類を税務署へ提示し、控除要件を満たすことを証明します。
2年目以降は年末調整用の書類が税務署から発行されるため、金融機関が発行する『年末残高証明書』とあわせて会社へ提出し、年末調整で手続きできる仕組みです。
ふるさと納税とは?
納税の仕組みと控除上限の算定方法
ふるさと納税は、好きな自治体に寄附を行うことで所得税・住民税から控除を受け、寄附額のうち自己負担2,000円を除いた分が実質的に戻ってくる制度です。
控除上限は『所得控除後の課税所得』と家族構成(扶養人数)によって算出されるため、住宅ローン減税やiDeCoなど他の控除と重なると、ふるさと納税の控除上限額が変動します。
所得税からの控除額の計算式、また住民税からの控除には「基本分」と「特例分」があり、それぞれの計算式が用意されています。計算する際には、ふるさと納税の申し込みサイト等にある表計算ツールや総務省のシミュレーターを利用すると良いでしょう。
住宅ローン減税〈1年目〉とふるさと納税の落とし穴
ここまで住宅ローン減税とふるさと納税をそれぞれご紹介してきましたが、これらは併用することが可能です。ただし、住宅ローン減税1年目の場合は、気を付けたいポイントがあります。
多くの人が見落としがちなのが、住宅ローン減税の適用初年度に所得税額が大幅に減ることで、ふるさと納税の控除上限が一気に低くなるという点。ローンの控除額が大きいほど寄附可能額は縮小します。
たとえば年収700万円の会社員が通常年で上限10万円寄附できるケースでも、住宅ローン減税初年度に25万円の住宅ローン控除が発生すると上限は約4万円へと圧縮されます。しかも、所得税側の控除しきれない残額が住民税特例分に振り替えられると、翌年度6月以降の住民税額も変動し、手取り予測が狂いやすくなるため注意が必要です。
上限が縮小したことに気づかず前年と同じ金額を寄附すると、超過分が純粋な寄附となり、自己負担2,000円では済まなくなるということも。制度を併用する際は“今年は控除で得した分を寄附に回そう”ではなく、“控除で減る枠を考慮して寄附を調整しよう”という逆算思考が不可欠です。
ワンストップ特例制度が使えない!?
ふるさと納税には、5自治体以内の寄附であれば確定申告不要で控除を受けられる『ワンストップ特例制度』があります。ですが、住宅ローン減税1年目の場合は年末調整での手続きができないため、この特例制度を選択できません。
ワンストップ特例の申請書を提出していたとしても、住宅ローン減税1年目として所得税の確定申告を提出した瞬間にワンストップ申請は無効化されます。結果として、確定申告書にて寄附金控除を記入し『寄附金受領証明書』を添付しないと控除が適用されないため、ワンストップで申請済みだから安心…という思い込みがトラブルの元となります。
夫婦の一方がローン控除申告を行い、もう一方がしない場合には、ワンストップと確定申告が家庭内で混在することで、書類管理が煩雑になるという別の落とし穴も。
防止策としては、
①確定申告の必要が判明した時点でワンストップ書類は提出しない
③寄附を6自治体以上に分散し“最初から確定申告”に寄せる
――などの方法がありますので、申告漏れがないように注意しましょう。
【ケーススタディ】年収差のある共働き夫婦のシミュレーション
ここで例として、年収差のある共働き夫婦が住宅ローン減税とふるさと納税をどう配分するかを検証してみましょう。仮に夫の年収700万円、妻の年収400万円、住宅ローンは夫名義で3,500万円を借入れたケースを想定します。
初年度のローン控除は約24万円。夫の所得税がほぼゼロになるため、ふるさと納税上限は夫が4万円弱、妻は約5万円と夫婦逆転現象が発生。
このとき、住宅ローンを妻と共有名義にして控除を夫7割・妻3割で分割すると、夫の控除は約17万円まで縮小し、妻に7万円の控除枠が生まれます。結果として夫婦合計でふるさと納税上限が約11万円に拡大し、返礼品をより多彩に選べるようになりますね。
ケーススタディはあくまでも一例で、共働きでも妻が育休に入る予定がある場合は翌年以降妻の課税所得が大きく減る等、状況によってさまざまなリスクがあります。住宅ローン減税とふるさと納税を併用する際は、慎重にシミュレーションを行いましょう。
よくあるQ&A:還付額がゼロ?寄附しすぎ?
締め切り後に『思ったより還付が少ない』『住民税が下がらない』と焦る人は少なくありません。よく寄せられる疑問をQ&A形式で整理します。
Q:還付額がゼロだったのはなぜ?
A:住宅ローン減税で所得税が全額相殺され、寄附の特例控除も住民税へ回った可能性があります。住民税通知書の“特例分”欄で確認しましょう。
Q:寄附上限を超えた場合どうなる?
A:超過分は寄附金控除の対象にならず、自己負担が増えます。翌年以降への繰り越しは不可なので、計算ツール等で上限をチェックしましょう。
Q:医療費控除と併用できる?
A:併用は可能ですが、課税所得が減るためふるさと納税の上限はさらに下がります。
Q:控除しきれず住民税でも余った?
A:市民税・県民税ともに控除上限があり、それでも余る場合は放棄されます。この場合、確定申告時点での対策はないものの、翌年の寄附額を調整することで損失を最小化できます。
こうした疑問を先回りで把握し、シミュレーター結果と照合することで“想定外”をゼロにすると良いでしょう。
まとめ
住宅ローン減税とふるさと納税は、どちらも家計の助けになる心強い制度です。しかし、初年度はその仕組みが複雑に絡み合い、「つもりだったのに損していた」という結果になりやすい時期でもあります。
制度を正しく理解し、控除の上限や申告の手続きをきちんと押さえることで、“知らずに損”を回避し、将来への安心につながります。特に1年目は、住民税やふるさと納税の影響が見えづらいため、慎重にシミュレーションを重ねることが重要です。
2年目以降は控除額が少しずつ減っていくため、空いた枠をふるさと納税やNISAなど、他の制度に振り分けていくことで、より効率的に家計をマネジメントできます。家電や宿泊券といった高額返礼品に挑戦するも良し、米や日用品で固定費をカバーするも良し。ライフイベントや税制改正にも柔軟に対応しながら、“わが家のベストバランス”を見つけていきましょう。
制度は変わっても、情報をアップデートし続ける姿勢こそが、長く得を積み重ねるカギです。住宅ローン減税とふるさと納税、どちらも味方につけて、家計の未来に安心と余裕をプラスしていきましょう。